同じようにワンルームマンションを持っていて、同じように「これ、どうしよう」と悩んでいた。それなのに、ある人は売却を決断して前に進み、ある人は何年も迷い続けた。
私は仕事柄、たくさんのオーナーさんを見てきました。決断できた人と、できなかった人。その違いはどこにあったのか。ずっと考えてきて、ひとつだけ、はっきりと感じていることがあります。
それは、「損を認められたかどうか」でした。
先に言っておきたいのですが、これは「決断できた人が偉い」という話ではありません。むしろ私は、迷い続ける気持ちのほうが、痛いほどよくわかる側の人間です。
正直に言うと、私も「損切りできない」側です
少し私自身の話をさせてください。
私はワンルームマンション投資こそやったことがありませんが、少額で株式投資をしています。そして、何度も経験しているのが「損切りができない」という壁です。値下がりした株を前に「もう少し待てば戻るかもしれない」と思って、結局売れない。頭では「損が広がる前に手放したほうがいい」とわかっているのに、どうしても決断できない。
これ、少額の株でもそうなんです。数万円、数十万円でも、損を確定させるのはこんなにつらい。
だとしたら、ワンルームマンションのように何百万円、人によっては一千万円以上が動く話で、「損切りできない」と感じるのは当たり前だと思うのです。額が大きくなればなるほど、損を認めるのが怖くなる。「ここまで払ってきたのに」「今売ったら大損になる」。その気持ちは、本当によくわかります。
損を認めたくないのは、弱さではありません
「自分は決断力がないんだ」と責める方がいますが、そうではありません。
人は、得をする喜びよりも、損をする痛みのほうを強く感じるようにできているといわれます。同じ金額でも、「得した」より「損した」のほうが、心に大きく響く。だから損を確定させる決断は、誰にとってもつらいのです。あなたが特別に弱いわけではありません。
私が見てきた「迷い続けた人」も、決して考えが足りなかったわけではありませんでした。むしろ真面目で、慎重で、「失敗したくない」という気持ちが人一倍強い方が多かった印象です。
でも、ひとつだけ伝えたいことがあります
ここからは、少しだけ厳しいかもしれない話をします。でも、責めるためではありません。
損を認めずに持ち続けることには、見えにくい損が隠れています。多くの方が意識するのは「今、手放したらいくら損が出るか」という一点だと思います。でも本当は、それ以外に「持ち続けるかぎりこれから先もずっと出ていき続けるお金」のことも、並べて見ておく必要があるのです。
持ち続けている間にも、ローンの利息、管理費、修繕積立金、固定資産税は出ていきます。空室になればその間の収入はゼロです。このあたりは、「損してない」は本当か。ワンルームを持ち続けるコストを考えるでも詳しく書きました。
簡単な例で考えてみます。
仮に、今のワンルームを売却しようとすると、売却価格だけではローンを返しきれず、完済して手放すために、手元から追加で200万円を持ち出す必要があるとします。正直に言えば、このブログを読んでくださっている方の多くは、売って手元にお金が残るというより、こうして「持ち出してでも手放す」ケースのほうが現実に近いのではないかと思います。
200万円を払って手放す――。これは、たしかに大きな決断です。「200万円もの損を確定させるなんて」と感じて当然だと思います。でも、もう一方の道、つまり「持ち続ける」を選んだ場合に、何が起きるのかも見ておきたいのです。
たとえば、持ち続けると毎月5,000円の持ち出し(赤字)が続くとします。このまま10年持ち続けると、5,000円×12か月×10年で、約60万円が出ていきます。さらに、その間に空室になればその月の収入はゼロですし、設備の故障や大規模修繕でまとまった出費が重なることもあります。建物が古くなれば、売りたいときの価格はさらに下がっていくかもしれません。
そして、ここがいちばんお伝えしたいところです。「今すぐ200万円払って手放す」という決断は、見方を変えれば、これから先ずっと出ていくはずだったお金を、確実に止めるという決断でもあります。
ローンを完済するというのは、利息という確実なコストを止めることでもあります。借金を返すことは、よく「いちばん堅実な投資」だといわれます。なぜなら、株式投資のように「増えるかもしれないし、減るかもしれない」という不確実なものではなく、払うはずだった利息ぶんだけ、確実に手元に残るからです。元本割れの心配もありません。「損を確定させる」と感じる行動が、実は「これ以上の損を止め、確実な得を取りにいく」行動でもある。そういう見方ができるのです。
私が見てきた「手放す決断ができた人」は、特別に勇気がある人でも、損に強い人でもありませんでした。ただ、手放すことを「損を確定させるだけの行動」ではなく、「これ以上の損を止めて、確実な得を取りにいく行動」として見ることができた人でした。
少し乱暴な言い方になりますが、こうも言えるかもしれません。手放せた人は、「損をして、それでも得を取れた人」。迷い続けた人は、「損をして、得を取れなかった人」。どちらも損はしているのです。違ったのは、その損を「これ以上ふくらませず、止められたかどうか」だけでした。
正直に打ち明けると、私自身、株で損切りを決めるとき、最後に背中を押してくれるのは「このお金を、ここに縛りつけたままにしていいのか」という問いです。損を広げ続けるより、見切りをつけて別の未来にかけてみよう。そう思えると、「よし」と手放せる。……とはいえ、まだ塩漬けにしたままの株もあるんですけどね(笑)。だから、すぐにできなくても大丈夫。気持ちは痛いほどわかります。
それでも、今すぐ決めなくていい
こう書くと「やっぱり早く売らなきゃ」と焦らせてしまうかもしれません。でも、それは私の本意ではありません。
損切りできない私が言うのもなんですが、決断は、無理に今日しなくていいと思います。ただ、ひとつだけ。まず、数字を直視してみることだけは、してみてほしいのです。
今の物件が、毎月いくらのプラスかマイナスなのか。このまま持ち続けたら、これから何年でいくら払うことになるのか。売ったら、いくらの損または得になるのか。決断はその後で大丈夫です。でも、数字を見ないままでは、迷うことすらできません。
売るべきか、持ち続けるべきか。その判断の整理は、ワンルームマンション、売るべきか持ち続けるべきか|判断基準を整理したにもまとめています。よかったら、数字を見るときの参考にしてみてください。
損を認めるのは、つらいことです。私もできない側の人間だから、よくわかります。だからこそ、「決断しなきゃ」と自分を追い込む前に、まず数字を眺めるところから始めてくれたら嬉しいです。

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