今の私は、あのときの女性看護師オーナーさんと同じくらいの年齢になりました。
あれから私も人生経験をし、あのとき分からなかったことが、いくつか分かるようになりました。
以前、その方のことを「忙しすぎて思考停止。ワンルームを抱えたまま動けなくなった看護師オーナーさんのこと」に書きました。ただ、あの記事には、売り出したあとのことを書いていません。
今回はその話しを、看護師オーナーさんのことを「彼女」として書きます。
売り出しを開始したあと、しばらく経ってから思考停止してしまった
彼女は、ある無料の相談窓口から私のところに来られました。
何度かお話をして、売却の方向で進めることになりました。査定を取り、ご本人の希望価格で市場に出しました。
ですが、買い手からの問い合わせは入りませんでした。
何度か値下げなどのご提案をさせていただいたあと、だんだんと連絡が取れなくなっていきました。
何をするにもお金が要りました
彼女の物件には、サブリース契約が付いたままでした。
※サブリース契約のことを、正しくは「マスターリース契約」と言います。
サブリースが付いた部屋は、なかなか買い手が付きません。サブリース業者から支払われる賃料は、一般的な入居者から直接入る賃料より1〜2割程度安くなるためです。そんな物件を譲り受けた買主もまた、そのままサブリース契約を引き継ぎます。
業者の取り分の中身は「サブリース業者が「入居者の家賃」をオーナーに教えたがらない理由」に書きました。
このとき、同時に2つの道で売却を進めていました。
一つ目の道が、このまま価格を下げて売りに出すことでした。ただ、価格を下げると残債が残り、その差は200万円から300万円ほどだったと思います。
その状態で売りに出すと、決済の時にその差額を補填して埋める必要が出てきてしまいます。
二つ目が、サブリースを外してから売ることでした。
外せば普通の入居者付きのワンルーム物件として別の投資家に売れます。売り出し価格もサブリースが付いたままに比べると上がります。
ただし、すぐにサブリースを解約するには違約金がかかります。彼女の契約では、サブリース業者がオーナーさんに支払っている賃料の6か月分に相当する額でした。
確か、その時の賃料が1ヶ月7万円ほど、合計42万円でした。
一般的な解約の条件は「サブリース解約の違約金、相場は?実務で見た契約書の中身」にまとめています。
「たったの42万円? それで価格が大きく上がるならさっさと払った方がいいじゃないか。」と思われるかもしれませんが、違約金を支払ってサブリースが外れても、実際に売れる額は、42万円を取り戻せるほどには上がりません。
どちらの道にも、先に現金が要ります。そこが行き止まりでした。
彼女にしつこくしてしまっていたのは私です
あのとき私は、電話とメールを駆使して何度も何度も「価格下げませんか」「違約金をすぐに支払えばすぐにサブリース外せます。どうしますか?」などと、3日に1回以上連絡してしまっていました。
毎月の手出しは1万円から2万円ほど続いていました。貯蓄はあったはずです。でも手出しと日々の出費で、少しずつ減っていきます。
返信が減り、そのうち連絡が取れなくなりました。
そのときの私の気持ちは「あのときの看護師オーナーさん、ワンルームマンションを抱えたままのあなたへ」に書いています。
今思えば、彼女に必要な情報は別のものでした
今思うのは、私が伝えるべきことは値下げのお願いではなかった、ということです。
一つは、足りないお金をどうやって用意するかという方法です。貯金から出す以外にも、手はあります。
もう一つは、売る以外の道です。売却だけが出口ではありません。
この二つを先に並べていれば、彼女が自分で選べました。私は選択肢を出さないまま、目の前の一つをお願いし続けていたのです。
当時の私には、提案の引き出しがありませんでした
正直に書きます。スタートアップしたばかりの会社も私も、経験が少なく、こうした場面での提案の引き出しがあまりありませんでした。
だから、とにかく早く売却をするために、その物件を市場が求めるものに近づけることしか考えられていませんでした。
方法は、思っているより多くあります
いまの私なら、彼女に伝えられることがあります。
足りないお金を用意する方法と、売る以外の道。別の記事にまとめました。
まずは、どんな方法があるのかを知ってください。
自分に使えるものがあるかどうかは、知ってから考えればいいのです。

